INTERVIEW

インタビュー

東 佳苗さん

Vol.04

東 佳苗さん/ Kanae Higashi

一般販売していないのにも関わらず、熱狂的なフォロワーを持つニットブランド「縷縷夢兎(るるむう)」。若干26歳ながら「縷縷夢兎」のデザイナーとして、ファッション、映像、インスタレーションと、さまざまな表現活動を続ける東佳苗さん。2015年には、渋谷PARCOで開催された「シブカル祭。」にて初めて監督を務めた映画『Heavy Shabby Girl』を発表しました。女子たちが、なぜここまで東さんのクリエーションを熱く支持するのか。彼女の“可愛い”ピンク色の世界にはどんな想いが込められているのか。今回のインタビューを通じて、少しその裏側が見えてきました。

東佳苗とファッション

 もちろん、ファッションは小さい頃から大好きなのですが、絵を描いたり漫画を描いたり、シンガーソングライターを目指してバンドをやったりと、今まで色々な夢を持ってきました。学生の頃からアルバイトでお金を稼ぐより、同じように時間を使うなら自分がつくったものをお金に変える活動のほうが今後につながるし、意味があるなと思っていて。単純にそのときに興味があることをアウトプットし続けて、それがそのまま今に至るという感じです。
 今、ニットブランドとして「縷縷夢兎」をやっているのですが、始めた頃はアンティークのパーツを使った洋服や小物など、今とは少し雰囲気の違うものをつくっていました。少しずつセレクトショップに置いてもらえるようになったあるとき、男性の方から「このブランドもあのブランドも男から見たら違いがわからない」と言われたんです。ひとりのバイヤーさんが選んでいるので、そこにはバイヤーさんの好きな世界観を持ったブランドの商品たちが並んでいる。バイヤーさんはそれぞれのブランドが持っている良さをわかって扱ってくれていますが、男性から見たら違いがあまりわからないという事実を指摘されてしまった。そのとき、誰かが既に思いついていること、流行っていることを後追いしても意味がないと考え、それまでの「縷縷夢兎」をいったんリセットしました。
 「縷縷夢兎」をリセットした後、当時の私はアニメが好きでレイヤーなどをやっていたこともあり、二次元の服をオマージュしたファッションアイテムを展開する「ウサギノリンゴ」というブランドを、現在《バンドじゃないもん!》のメンバーとして活動している恋汐りんごちゃんと始めました。その後、彼女はアイドルの道へと進み、私は文化服装学園のニット科に進級しました。そしてニットブランドとして新たに「縷縷夢兎」を再開し、また、同時に「白昼夢」という平成生まれの女子クリエイターによる合同展示会を発足・主催して、私たちなりのガールズカルチャーの発信を始めました。興味のあることは始めずにはいられない自分にとっては、この頃から新しい挑戦をし続けて活動していました。

映像『Expiation in a dream』(2015)

映像『Expiation in a dream』(2015)
出演:武居詩織、来夢、るうこ、井元まほ、ひらく、筒井のどか

東佳苗とアウトプット

 たまに「テーマ:ゆめかわいい」と書かれた企画書をもらうことがあるんですけど、私はその言葉があまり好きではなくて。可愛いガーリーなものが好き、ふわふわパステルな世界観が好き、ということで「縷縷夢兎」が好きだと言ってくれる人もいるのですが、片面だけ撫でられている気がしてそれにずっと違和感を感じていました。
 地元・福岡で高校生の頃から制作を始めて、地元の専門学校に通い始めた頃は、ファッションではなく絵を描く仕事が多かったです。小・中・高と、クラスに馴染めない不穏な学生生活だったので、高校では所属していた美術部の部室が逃げ場でした。そんなうつうつとした気持ちが意図せず絵に出ていたようで、高3の頃に個展をしようと作品を持ち込んだギャラリーのオーナーに「君の絵は君と同じような心境の人が見たら一瞬で泣くくらいの強い力を持っているのかもしれないけど、そうじゃないノーマルな心境の人には何も伝わらないよね」とズバっと酷評されて。私の作品が“可愛い”と評される世界観に行き着いたのは、きっとこの言葉が転機だったんだと思います。
 辛いときに見て、一緒に落ちてくれるものじゃなく、一瞬でポジティブな気持ちに切り替えてくれるようなクリエーション。私自身、どん底にいるときに芸術やファッションに救われたことがあったので、私もそういうアウトプットを目指そうと思ったんです。裏側には壮絶な想いやテーマがあるけれど、見た目はキレイで可愛い、気持ちが明るくなるようなものをつくっていこうと変わったんです。

映像『dress for me』(2015)

映像『dress for me』(2015)
出演:美岳、辻井ゆう、佐藤正樹、新井秀幸、斎藤紘士、GENTA YAMAGUCHI、半沢よしき

東佳苗と「シブカル祭。」

 「シブカル祭。」には過去4回参加させてもらいました。2012年はチームマコプリの一員として渋谷PARCOパート3のショーウィンドウをディスプレイし、 2013年は「伍戒」のポップアップショップへ参加。2014年は公園通り広場でファッションショー、そして去年は短編映画の監督をやらせてもらいました。毎年違う形で参加することで「シブカル祭。」に育ててもらったような感覚です。
 特に2014年のファッションショーでは、生モノのクリエーションの中で、「縷縷夢兎」の世界観を見せることができたと思っていて、ここでブランドの認知が広がった気がします。実はあのとき、男の子をステージに登場させようと思ってたけど実現できずじまいで、もし次の機会があるなら、一種のモチーフとして男の子を登場させてみたいなと考えています。自分もそうですが、ガールズカルチャーと言っても、その側には彼氏だったり旦那さんだったり好きな人だったり、きっと男の人が存在していると思うので(一概には言えないですが)。また、女の子のファッションが女の子のためにつくられていても、買う人にとっては身近にいる男の人に見てもらうための出費だったりする。女の子のためだけの世界なんて綺麗ごとなのでは、という想いがどこかにあるので、そのメタファーとして、中心に男性が存在するファッションの表現をしてみたいと思い、去年の個展で発表した短編映像「dress for me」では、初めて縷縷夢兎の表現として男性を起用しました。

ANREALAGE  2015-16AW Collection

ANREALAGE  2015-16AW Collection

「シブカル祭。2014」ファッションショー(2014)

あの(ゆるめるモ!)、アリスムカイデ、上原亜衣、うちだゆうほ、金子理江(LADYBABY)、恋汐りんご(バンドじゃないもん!)、武居詩織、永井亜子、水玉らむね、山田愛菜、来夢、るうこ

東佳苗と映画

 昔からファッションと同じくらい映画が好きで、高校生の頃から何らかの形で映画に携わりたいという想いがありました。「縷縷夢兎」として、“muse”と呼んでいる女の子をアイコンとしてファッション映像を発表したり、映画の衣装や美術、トークイベントやレビューなどの仕事をしてきましたが、昨年「シブカル祭。」で初めて“映画監督”として声を掛けていただきました。
 はじめは率直に「こわい」と思いました。でも私は今まで、学校で勉強していないことでも(スタイリストやアートディレクター、プロップスタイリストなど)、お仕事をいただければ、なんとかそこから勉強して試行錯誤して挑戦してきたので、今回の“監督”業も、無茶かもしれないけど挑戦してみようと思ったんです。
 案の定、異業種の私が映画監督をやることはとんでもなく大変でした。現場で、監督・衣装・美術という仕事を同時進行するという荒技になり、今までの人生で一番というくらい大変な日々を過ごしました(笑)。『Heavy Shabby Girl』という短編を監督して、たくさん反省点がありながら、たくさんの人に協力していただき何とか完成させた。次は『Heavy Shabby Girl』の長編を実現させるために動いているのですが、短編での反省をふまえつつ、しっかり練って制作に望まないと、世に出してはいけないなと思っています。次の長編作品がその次につながっていくかもしれないし、私の監督としての最後の作品になるかもしれない。園子温監督が、「何かを生み出すからには、自分だけでも『めっちゃいい! 最高!』と思えないと世に出してはいけない」、というようなことを話していて、まさにそんな気持ちです。そうすれば、少なくともひとりは作品を愛する人がいるわけだから、自分と趣味趣向が似た人には響いてくれるのかなと。
 学生の頃に見た映画の物語、世界観、衣装、美術に受けた影響が今の私の活動につながっています。過去の私のトラウマにも似たざわめきを、観る人に追体験してもらえるよう、物語や美術の細部まで拘っていきたいです。ファッションの仕事は死ぬまでずっと続けて行きたいですが、“初めての挑戦”も死ぬまでずっと続けて行きたいなと思っています。生きてる限りは自分史を塗り替えて成長して行きたいし、自分と戦い続けて苦悩していく必要があると思っています。

ANREALAGE  2015-16AW Collection

ANREALAGE  2015-16AW Collection

短編映画『Heavy Shabby Girl』(2015)

出演:黒宮れい(LADYBABY)、来夢、鳥肌実、木口健太、柴田千紘、尾崎桃子

東 佳苗/ Kanae Higashi

ひがし・かなえ。「縷縷夢兎(るるむう)」デザイナー、アートディレクター、スタイリスト。1989年、福岡県生まれ。ハンドニットの一点物アイテムを中心に展開中。でんぱ組.incや大森靖子をはじめ、アイドル、アーティストの衣装デザイン、アートディレクション、スタイリストとして活動中。感情を綺麗に吐露し生まれるクリエーション、“嘔吐クチュール”をブランドコンセプトに置き「縷縷夢兎」を体現する女の子を“muse”と呼ぶ。「ミスiD」審査員なども務める。2015年、初の映画監督作品『Heavy Shabby Girl』を発表。

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