INTERVIEW

インタビュー

森永 邦彦さん

Vol.03

森永 邦彦さん/ Kunihiko Morinaga

森永邦彦さんがデザイナーを務めるファッションブランドANREALAGE。渋谷パルコでのポップアップショップ出店に始まり、初の展覧会、初の書籍、パルコによるパリコレクション参加のサポートなど、ANREALAGEとパルコには縁浅からぬ付き合いがあります。ANREALAGEが目指してきたものと森永邦彦さんのファッション観から見えてくる飛躍の秘密とは。そしてパルコは、どんなふうにANREALAGEと関わってきたのでしょう。

森永邦彦とパリコレ

今年の3月、ANREALAGEとして2回目のパリコレクションに参加しました。今シーズンのテーマは「Light(光)」。前回、世界中どこにでもあり、誰の洋服のうえにも落ちる「Shadow(影)」というテーマでコレクションを発表したのですが、今回はその対極にある光をどう表現するか、という普遍的なテーマに取り組みました。僕たちANREALAGEは、今までになかった洋服、新しいエッセンスを取り入れた洋服をつくることを大事にしてきたブランドで、今回は一見真っ黒に見える洋服が紫外線によって鮮やかな色を発色するという洋服を発表しました。多くの人にはただ黒く見えるのですが、人の目で受け取れる光の波長の外にあるというだけで、実は鮮やかな色がすでに洋服の上に乗っています。それをブラックライトの紫外線に反応させて見えるようにしているだけなので、例えば蝶々など、受容できる光の範囲が人とは違う目を通して見ると、そこには黒ではなくカラフルな服が現れています。

ANREALAGE  2015-16AW Collection

ANREALAGE 2015-16AW Collection
ただ、理屈ではわかっていて頭の中ではうまくいくことも、いざ現実につくってみると黒からそれより薄い色を浮かび上がらせるというのはとても難しい挑戦でした。この実験的な手法を使わなくても「Light(光)」というテーマを表現することはできたかもしれないんですけど、実験的な要素がないと自分自身が納得できない。それでいつも大変な思いをするんですが、こういう挑戦を続けていきたいと思っています。デザインをすることも好きですが、何かを発見して実験をしているときは本当にワクワクできるんですよね。

ANREALAGE  2015-16AW Collection

ANREALAGE 2015-16AW Collection

ANREALAGE  2015-16AW Collection

ANREALAGE 2015-16AW Collection

森永邦彦とテクノロジー

ここ数シーズン、新しいテクノロジーを服に落とし込んできたのですが、実はテクノロジーをそんなに特別なものだとは思っていません。例えば、ファックスが普及し始めたとき、「書いた文字を電話で送れるなんてすごい!」という発明品でしたが、それがだんだん日常化していき、そして今は過去のものになりつつある。僕が洋服をつくるときに使っているテクノロジーも、そういう流れの中にあるものだと思っています。何か新しいものをつくろうとすると、どうしても新しい技術が必要になる。僕が大事にしているのは、テクノロジーを使うという手段ではなくて、今までにない洋服をつくるという目的のほう。だから特別にテクノロジーだけにこだわっているわけではなくて、形や素材や色など、これまでいろいろな角度から洋服に対する新しいアプローチを探してきた中で、今はそれらよりも人が使っていない道具や技法を使って、そのなかで格闘をして、新しい服をつくることのほうに価値を感じているというだけなんです。

ANREALAGE  2015-16AW Collection

ANREALAGE 2015-16AW Collection
普段、生活をしている中でも、何かしら洋服に応用できそうなものを常に探しています。本当に見たことのないものは想像することもできないので、いま存在する現象をどう組み合わせていくか。お札やパスポートには、偽造防止の目的で目に見えない印刷が施されていますが、それらは今回の洋服のようにブラックライトを当てることで可視化します。人の目には見えなくても、その現象は実際に起こっている。それなら、そういう現象を服に応用できないかといつも考えているわけです。

ANREALAGE  2015-16AW Collection

ANREALAGE 2015-16AW Collection

ANREALAGE  2015-16AW Collection

ANREALAGE 2015-16AW Collection

森永邦彦とPARCO

渋谷パルコはANREALAGEが初めてショップを出した場所です。当時、百貨店では自分たちの世界観を表現しにくいと感じていて、対してパルコは発信拠点になりつつ商品がしっかりと多くのお客さんに届く場所でした。そのときの渋谷パルコ店長も頑張れって盛り上げてくれて、お客さんがこんなに来てくれるんだって驚いたのを覚えています。この経験が直営店の出店につながりました。それともうひとつ、2012年にパルコミュージアムで開催した展覧会「A REAL UN REAL AGE」も僕たちのブランドにとって大きな出来事。ちょうどブランドを始めて10年という節目で、東京での歩みを振り返ることができました。ANREALAGEはシーズンごとにテーマが変わるブランドで、そしてそれを自分たちの信念としているので、どんなに面白いものでも半年で売り場から消えてしまいます。すると、昔から好きでいてくれる人じゃなければ、それらを見てもらう機会がなかった。これから世界に出ていきたいと思っていたタイミングで、東京でANREALAGEがどんなふうな10年を歩んできたのか、ということを示せたのはとても意味のあることでした。

展覧会をするとき、最初はダメ元で提案に行きました。展示コンテンツの柱のひとつになったコレクションの写真は、ANREALAGEを過去2年にわたり撮ってくれていた奥山由之くんという写真家の作品。開催と同時に彼の写真で本をつくったのですが、当時奥山くんはまだ写真家として何のキャリアもない大学生だったのに、そういったことを抜きにして作品を評価してもらい展覧会をやらさせてもらいました。可能性を見出してもらったという印象です。出店のときからずっと、パルコの皆さんにはよく応援してもらっていますね。

森永邦彦とファッション

パリコレクションに出ることは、メリットはもちろんありますが、同時にものすごくリスクのあることです。東京で地道にやっていけば、おそらく会社もブランドも徐々に大きくなっていったと思います。ただ僕たちの場合はリスクを背負ってでもパリに行って挑戦するほうが、会社にとってプラスになるという考えでした。もしかしたら、ただもっと先にある世界を見たかっただけなのかもしれなんですけど。もともと僕が洋服をつくり始めたきっかけは、自分が着るために、というところにはなくて、純粋に大きな憧れなんです。アンダーカバー、コム・デ・ギャルソン、マルタン・マルジェラすべてに憧れがあり、必然的にその方々が発表しているパリコレクションという舞台への憧れがありました。ファッションを志したとき、その舞台がすごくキラキラして見えたんです。パリに行くのを決めたのは、きちんと最初の気持ちに忠実になろうというのが一番大きな理由だったのかもしれません。

ANREALAGE  2015-16AW Collection

ANREALAGE 2015-16AW Collection
パリコレクションではエレガンスという言葉が評価の大きな基準になっていますが、ファッションってそれだけじゃない、と僕たちは思っています。いろいろなブランドのショーを見て「きれいだな」とは感じますが、同時に心を鷲づかみされるような気持ちにはなれず、共感できない部分がある。すごく上質な素材を使って、すごく技術力のあるパターンで、すごく細部までつくり込まれた洋服は、確かにきれいでいいなと感じるんですけど、何かそれを上回ってしまうキラキラした瞬間がファッションには絶対にあると思うんです。ファッションショーの最中に洋服の色が変わっていく瞬間、会場に今まで感じたことのないどよめきと熱気がありました。 その瞬間、色が変わる以上の大きなものが’変わった’と感じました。今そういう瞬間をもたらすエッセンスが、何なのかははっきりとはわからないんですけど、そういった瞬間があることをずっと忘れずに、これからもやっていきたいと思っています。

ANREALAGE  2015-16AW Collection

ANREALAGE 2015-16AW Collection

ANREALAGE  2015-16AW Collection

ANREALAGE 2015-16AW Collection

森永 邦彦/ Kunihiko Morinaga

もりなが・くにひこ。ANREALAGEデザイナー。1980年、東京都生まれ。ANREALAGEとは、「A REAL=日常」「UN REAL=非日常」「AGE=時代」を意味する。早稲田大学社会科学部卒業。大学在学中にバンタンデザイン研究所に通い服づくりをはじめる。「神は細部に宿る」という信念のもと作られた色鮮やかで細かいパッチワークや、人間の身体にとらわれない独創的なかたちの洋服、テクノロジーや新技術を積極的に用いた洋服が特徴。2003年、「アンリアレイジ」として活動を開始。2005年、ニューヨークの新人デザイナーコンテスト「GEN ART 2005」でアバンギャルド大賞を受賞。2005年秋、06S/Sより東京コレクションに参加。2011年、第29回毎日ファッション大賞新人賞・資生堂奨励賞受賞。2012年、個展「A REAL UN REAL AGE」(パルコミュージアム/渋谷)、2013年、「フィロソフィカル・ファッション2 : A COLOR UN COLOR」(金沢21世紀美術館・石川)を発表。2014年、15S/Sよりパリコレクションデビュー。

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