INTERVIEW

詩羽(水曜日のカンパネラ)
2022

詩羽(水曜日のカンパネラ)さん

昨年、水曜日のカンパネラからコムアイが脱退、2代目ヴォーカル・詩羽を迎え、新たな体制で活動を継続するというニュースが飛び込んできた。中毒性のあるサウンドとひねりの効いたパフォーマンスで、国内外のファンを魅了してきたアーティスト・水曜日のカンパネラは、パルコが若きクリエイターたちとつくったカルチャーの祭典〈シブカル祭。〉にも度々アクトとして出演。閉館後の渋谷PARCOでミュージックビデオの撮影が行われるなど、いくつかの瞬間を共に駆け抜けてきた。そんな彼らの新しい門出となる、詩羽の初パフォーマンスは渋谷PARCOの屋上で行われた。初めてのライブとは思えないほど、華やかに堂々としたパフォーマンスで唄い切った彼女は、どんな想いでステージに上がったのか。そして、自身の過去の経験を通して気づいた「才能」とは。

水曜日のカンパネラ第2章、始動。

昨年の夏、縁あってDir.Fさんから「水曜日のカンパネラで、ヴォーカルをやってみないか?」というお誘いをいただいたとき、間髪入れずに「やります!」とお返事をしました。意気揚々とその日は帰ったものの、家で一人になってから水曜日のカンパネラの映像を見返しているうちに「あれ、私はけっこう大きな船に乗ってしまったみたいだ……」と冷静になっていったんです。だけど不安よりもワクワクしている気持ちの方がずっと大きかったので、気合いと勢いで、レコーディングまでとんとん拍子に進みました。初めて怖いと思ったのは、いよいよ新体制で楽曲をリリースする直前のタイミング。2代目のヴォーカルとして発表されたら、もともと水曜日のカンパネラを好きだった人たちからどういう反応が来るのかまったくわからなかったし、前の方がよかったという人もきっといるだろうし、ビクビクしていました。

水曜日のカンパネラ第2章、始動。
水曜日のカンパネラ第2章、始動。

急な変化に対して、自分もすぐに追いつくことって、なかなか難しいじゃないですか。水曜日のカンパネラのヴォーカルが2代目に変わるなんて、私たちも想像していなかったし、ファンの方も想像していなかったことだと思うんです。だから最初のEP『アリス/バッキンガム』が配信されて、予想以上にあたたかい反響が返ってきたときは驚きました。SNSで「コムアイさんのときから好きだけど今回の曲も好き」、「絶対ライブ行きます」って感想をくださったり、MVのコメントもポジティブなものが多くて。正直、こんなにたくさんの人が受け入れてくださると思っていなかったので驚きました。特に、高校生とか、大学生くらいの同世代のリスナーから反応が来たことは嬉しかったですね。

渋谷PARCOの屋上で行われた初パフォーマンス。

水曜日のカンパネラの新体制で初めてライブをしたのは〈P.O.N.D.〉というイベントでした。渋谷PARCOの屋上で、ステージは四方をお客さんに囲まれていて、正面だけじゃなく、横を見ても後ろを見てもお客さんがいる状態が楽しくて仕方なかったのを覚えています。手を上げながらノっていただいている方も、我が子を見るような目線であたたかく見守ってくれている方もいらっしゃって。出る前はとても緊張していたんですけど、何曲か歌っていくうちに「楽しいな、これ」というスイッチが入って、初ライブだってことを忘れてしまうくらい、安心してステージに立つことができました。ライブ配信もあったのでカメラがすぐ近くにあって、なんだかインスタライブとパフォーマンスを同時にやっている感覚でした。普段インスタライブが身近にあるからこそ、延長線上のように思えたのかもしれないです。

渋谷PARCOの屋上で行われた初パフォーマンス。
渋谷PARCO屋上のステージで開催された<P.O.N.D.>(2021年10月)のオープニングパーティにて。

その後も、何ヵ所かでライブをやらせていただきました。まだ数えるほどしかステージに立ってないけど、自分はリハーサルで決め過ぎずに、気負わずお客さんの前へ出ていく方が向いているのかなと思います。もちろん練習しながらポイントで動きは決めるんですけど、本番で楽しくなるとつい忘れちゃうタイプなので(笑)。先日ライブをやらせていただいたリキッドルーム(2022年1月20日)は、今までで一番大きな会場でした。リハで「声も出る、体力もある、大丈夫!」って自分で自分に言い聞かせていたら、不思議と緊張しなかったんです。水曜日のカンパネラの活動を始めてから、周囲の人に「肝、座ってるね」と言われることが増えた気がします。

前髪をバッサリ切ったら、自分の個性が見えてきた。

幼い頃から、やってみなきゃわからないことに物怖じしたくないし、失敗したらまたやればいい、くらいの気持ちで何事にも挑んできました。大抵のことは、根性があればできると思っています。高校生のとき、自分の見た目をガラッと変えたこともそのひとつ。それまでは服装も髪型もこだわりがなくて、周りの子と変わらない無難なものを選んでいたんですけど、だんだんそれが窮屈になっていました。そのまま悶々としているのが嫌だったので、まずは見た目から変えてみようと思い、ピアスを開けて、髪の毛を刈り上げて、前髪を短くしたんです。急だったので、ずっと通っている美容師さんにも「本当に刈り上げていいの?」って何度も聞かれました(笑)。いざ変えてみたら、みんな「似合ってる!」と言ってくれて、卒業する頃にはオン眉が私のトレードマークみたいになっていました。

前髪をバッサリ切ったら、自分の個性が見えてきた。

ファッションのルーツは、母の影響が大きいです。母が20歳くらいだった頃の写真を見ると、自分の好きなものが明確で、全身ヒステリックグラマーのようなスタイルでした。私は今90年代のファッションが大好きなので、母のおさがりをけっこう着させてもらっています。あとは、矢沢あいさんの漫画が私のファッションバイブル。母が『ご近所物語』を全巻持っていて、それがまず姉に渡って、そのあと私に受け継がれました。服を選ぶとき、どこのブランドが好きとか、雑誌のファッションを真似したいとかはないんですけど、矢沢さんの漫画に出てくる女の子みたいな服装に強く憧れています。

前髪をバッサリ切ったら、自分の個性が見えてきた。

自分を肯定してあげられる力こそが、才能。

このインタビューを受ける前に、「才能」とは何だろうって、検索してみたんです。そしたら「何かを成し遂げる力」とか「生まれ持ったもの」と書いてありました。確かに、生まれ持ったものはみんなそれぞれあって、でもそれは最初から100%あったわけではなく、2%くらいだったものを努力して10%、50%に伸ばしていくものだと思いました。その過程で、努力したってことを自分自身で認めてあげて、さらに成長していくというか。だから、自分を肯定できる力こそが才能なのかなって思います。

アーティストとして活動していく上でも、自分のことを肯定してあげることが、すごく大切だと思っています。学生時代に、色々うまくいかなかくて自分のことが嫌いだった時期がありました。あのとき苦しかったのは、自分で自分を認めてあげられなかったからなんだってことに気づいたんです。最近もSNSを見ていると、私と同じ世代(20代)って周りの目を気にしている人が多いし、自分のことが好きだってなかなか言えないんですよね。だから、私がこうやって表舞台に立つ仕事ができるようになったからこそ、「自分のことをもっと好きでいていいんだよ」って伝えたい。私自身も、ずっと自分を好きでいられる表現者でありたいと思っています。

自分を肯定してあげられる力こそが、才能。

詩羽(水曜日のカンパネラ)

うたは/アーティスト。2001 年生まれ、東京出身。高校卒業後、ストリートスナップなど個人でのモデル活動を行い、音楽と言葉と時間と私をテーマにInstagramに詩と写真を投稿しながら自己表現を模索している。2021年9月6日、水曜日のカンパネラに2代目主演/歌唱担当として加入。同年10月には渋谷PARCOで開催されたイベント<P.O.N.D.>にて新体制後初のライブパフォーマンスを披露、1st EP『アリス/バッキンガム』をリリース。12月に開催されたリリースパーティー<LET’S PARTY>は一般発売後数分でSOLDOUT。2022年2月25日には最新曲「招き猫/エジソン」が2曲同時リリースされ、今後の活動に各方面から注目が集まっている。http://www.wed-camp.com/

Photo: Yuki Aizawa
Styling: Koji Taura
Hair&Maku-up: Tomomi Imamura(Lila)

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